第8回全国高校生ポスターコンクール 2009.8.19(Wed)-8.24(Mon)
8th Highschool student poster contest (Domestic)

●ポスターは世界を結ぶ

 ポスターはコミュニケーション・アートであるが、昔から『社会の鏡』とも言われ、その時代を映し出してきた。昨年の世界的な金融不況は、1920年代の世界恐慌を彷佛させ、今もその影響を受け国民の生活に影を落としている。

 第9回世界ポスタートリエンナーレ・富山2009が7月18日から開催されている。その前日、オープニングセレモニーに列席し鑑賞したが、入選作品の多くは直接的には金融不況を映し出していない。グランプリを受賞したスイスのラルフ・シュライフォーゲルの作品は美術館の文化ポスターであった。つまり、ポスターは時代を反映するが、その反映は社会の表層的な表現だけではない。また、表現において商業ポスターや社会・公共ポスター、文化ポスターの違いや区別がなくなり、富山では募集がA部門、B部門と、分野ごとにはなっていない。いつからと断定できないが、ポスターにおける表現がデザイン的表現から解放され、多様な、クロスオーバーした表現が主流となってきている。
 12年前、美濃市に和紙等の研究で滞在していたロシアのウラジミール・チャイカは、その時日本国際ポスター美術館に来館し、日本の文化について熱く語ったことがあるが、富山で12年ぶりの本当に偶然な再会となって驚いた。私は学生を引率していたので、ゆっくり話すことができなかったが、彼は亀倉雄策国際賞を受賞した。

 第8回全国高校生ポスターコンクールのテーマを『むすび』とし、絆、団結、そして縁結び、さらに地域相互や世界との連携などむすびのの言葉から、高校生のイメージ豊かな創造力が今の社会をどう捉え、表現するのか、審査委員として密かに期待していた。

 最優秀賞を受賞した林三千朗の『絆』は、サッカーを通して友達と築いた絆を繋ぎ止めて大切にしたいという思いが伝わってくる。つまり友情=絆を繋ぎ止めるのはサッカーであることを、色彩がもつ豊かな表現を通して暖かく、かつ明快に表現している。
 市長賞の森永大貴の『人の出会いも人の終わりも結ぶ心』は、配色や構成が洗練されていて、コピーをとると現代絵画的になり、ポスターを自由に捉えているところが良い。
 教育長賞の中野里咲の『街中のむすび』は、交差点での出会いを通して人との繋がリを表現しているが、着想がおもしろい。ただ、あまりにも制作意図が出過ぎると、かえって表現が弱まる。
 岐阜経済大学長賞の清水香奈の『各地を結ぶ旅』は奥の細道の出発点と結びの地大垣をイメージして芭蕉と曾良が旅している様子を描いているが、奥の細道を1枚のポスターの中に纏め、瞬時にして奥の細道のイメージを捉えることができ、ポスター表現の特色を活かした作品となっている。
 優秀賞の井上詩織の『笑んむすび』は白を中心に赤、黄等のクレパスが下地として塗られ、その上から線描で子どもたちの笑顔が表現されているが、その子どもたちの表情が素晴らしい。ポスター表現としては弱いが、じっくり見ていると微笑みが伝わって来て豊かな心になる。
 大當乃里衣の『僕を乗せて揺れる時間』は電車に人々が乗っている目的や思いがどのように繋がっていくのかを、時間の流れ等を通して多重空間としてうまく纏めているが、作者のメッセージが弱い。 
 山口愛美里の『2人で1つ』は、末永く2人で生きる喜び・結びを表現しているが、老夫婦以外の人物描写、顔の表現であるが、口だけではなく、眼、鼻等表現したほうが良かったように思う。
 川野綾香の『母と子』は、生まれた子どもはまず母親の愛情によって大きくはばたいていくのであり、母親と子どもの結びをメッセージとして表現している。コピーがなくても伝わる表現であり、入れるとしたら小さく1行で纏めるべきであった。

 今回のテーマ『むすび』について、高校生らしい多様な解釈があって審査員を悩ませたが、また一方では、入賞作品以外にも優秀な作品が多く、審査していて楽しかった。高校生が、ポスターを通して現代社会を真剣に、かつ多様な眼で見て考えていることが伝わってくる。そのメッセージを多くの大人たちに伝えることが、このコンクールの使命のひとつだと思っている。

 ところで、美術教育におけるポスター制作は、作品主義の代表として槍玉にあげられるが、この高校生ポスターコンクールを通して考えると高校における美術教育としてのポスター制作は有効だと思っている。今後、それを実証していきたい。そして、いずれ日本国際ポスター美術館として『ポスターの教科書』を発行したいと思っている。

 最後に、このコンクールを支援し、高校生を指導していただいている先生方にお礼申し上げます。また今後ともご支援くださるようにお願い申し上げます。

審査委員長
松浦 昇(金沢大学教授)