第14回全国高校生ポスターコンクール 2015.8.22(Sat)-8.31(Mon)
14th Highschool student poster contest (Domestic)

●ポスターは連想させ、気づかせ、考えさせる

 2020年の東京オリンピックのエンブレム(シンボルマーク)が、決定した。
この過程において、一時、桜の招致マークがエンブレムに扱われるような誤解が生じ、東京の新聞社から、東京オリンピックのシンボルマークについて、意見を聞かれたことがあった。私は、「今、問題になっている桜の招致マークは、あくまでも招致活動のためのマークであって、オリンピックの精神やオリンピックの競技を表象していません。新たにシンボルマークを考えるべきです。」と、そして、記者の「1964年の東京オリンピックの、亀倉雄策さんが制作したシンボルマークの赤い円は、日の丸を表現しているのですか?」という質問に、「私が聞いたのは、太陽です。太陽は緯度によって日照時間が違いますが、太陽は国や民族に関係なく平等に照らします。太陽こそオリンピックの精神を象徴していると考え、表現されたシンボルマークだと思います。」と回答した。

 ポスターは、瞬時に理解されなければいけないと言われているが、その記憶が残るものでなければならない。亀倉が1962年に制作したオリンピックのポスター(スタートダッシュ)は、六名の選手で構成されているが、地球上の六大陸を連想させ、多民族が集うオリンピックの精神を気づかせ、オリンピックとは何かを考えさせる。そして、記憶が鮮やかに残るポスターと言えよう。

 ところで、第14回全国高校生ポスターコンクールは、『水』というテーマに対して、1079点のポスターの応募があった。『水』というテーマは、身近かな問題から環境問題まで扱う対象が広く、高校生が、感性と想像力によって、どのように切り込んでくるのか、その作品を見ることは楽しみであったが、ポスターの選別は、苦しみでもあった。高校生にとって、ポスターは連想させ、気づかせ、考えさせるという取り組みは、大変、難しいことだと思うが、ポスターはまず、アイデアが重要であるので、是非、挑戦して欲しい。最初から描写的表現力やCGによるコラージュ、モンタージュ等の技術に頼るのではなく、アイデアを活かすための表現力、技術力であって欲しい。

 最優秀賞・楠元璃子の作品『水惑星』は、力強い表現で見る人を引き込む。地球は『水の惑星』ともいわれるが、作者は、水を浴びる体感を通して、地球讃歌を表している。市長賞・宮下沙也加の作品『メイド イン 水』は、野菜や果物の味は、美味しい水から作られていると考え、実直な表現が共感を呼ぶ。教育長賞・渡邉祐佳の作品『水と生きる』は、水田の中における生物の共生を通して、自然との繋がり、その中で水の果たす役割や力を、生活の中で感じたことを表現しているところが素晴らしい。岐阜経済大学長賞・増田涼風の作品『WATER CONTENT』は、人間や生物の体に占める水の割合を、デザイン化されたピクトグラム(絵文字)で表現されているが、あらゆる生命に、水が関わっていることが、的確に伝わり、印象に残る作品である。

 優秀賞は4名いるが、梅田佳奈の作品『いのちの雨』は、水の循環過程の中で、雨が動植物の命と関わり、象徴的に表現された花は、『いのち』を表現しているが、詩情を感じさせる。高森勇祐の作品『汚濁』は、海の汚染問題をテーマとし、デフォルメされた形態が、力強いコミュニケーションとなっている。

 今村遼河の作品『水を汚さないで!』は、水質汚染は、川や海のゴミ投棄が主な原因で、それを簡潔な形態で表現し、ゴミを捨てないで!というコピーが強く伝わってくる。伊藤可南子の作品『命の源』は、水は命の源であり、手の中にハリヨを泳がすことによって象徴的に表現している。描写力を活かすために、レイアウトを工夫すれば、もっと良くなる作品である。

 入賞作品以外にも良い作品が多かったように思う。先生方のご指導と、生徒自身の努力の賜物で、この中から、世界に挑戦するポスターが出てくることを期待したい。

松浦 昇(審査委員長・金沢大学名誉教授)