第12回全国高校生ポスターコンクール 2013.8.29(Thu)-9.4(Wedi)
12th Highschool student poster contest (Domestic)

●現代ポスターは「時代の鏡」といえるのか?

 ポスターは「時代の鏡」と言われて久しい。今日の現代ポスターは、現代という時代を一面的に表現しているが、現代という複雑な社会を的確に表現することは、大変、難しいと言える。経済がグローバル化された現代において、株価の動向や外国為替相場よって、その国の経済政策が左右されるというおかしな現象が起きている。一方、双方向性コミュニケーションと言われているソーシャルネットワークシステムのフェイスブックやツイッター等によって、コミュニケーション方法がネット化し、それに参加しないと取り残されたように感じている人は多いと思うが、果たしてそれが真の双方向性コミュニケーションと言えるだろうか。それらを否定している訳ではないが、趣味や出来事等の紹介だけでコミュニケーションが深まるだろうか。コミュニケーションにおいて重要なのは、お互いの建設的な議論の深まりによる相互理解ではないだろうか。

 東日本大震災から2年数ヶ月経ったが、被災者の生活は困窮をきわめている。高台移転が可能な地域は移転計画が進んでいるが、高台移転が不可能な地域では、復興計画が進んでいないと聞く。被災者の生活を考えると「減災」という発想による復興計画があってもよいのではと思う。つまり、海から逃げるのではなく、海と向き合う減災計画があるべきだと思う。

 第13回全国高校生ポスターコンクールのテーマは、昨年と同じ「絆」であるが、東日本大震災をテーマとしたポスターの数は減った反面、「絆」というテーマが、高校生の感性によって広く捉えられている。学校教育の現場では、学習目標である、思考力、判断力、表現力が強調されているが、ポスターデザインの学習は、それに相応しい教材といえる。つまり、ポスターはアートであり、メッセージであることを考えると、ただ、感性だけでは、良いポスターができない。造形的側面と情報伝達的側面を、どのようにバランス良く表現するか、思考力、判断力が試される訳である。

 最優秀賞・國見萌の作品「切れやしないさ」は、絆を赤い糸で象徴し、その糸はハサミ(指のハサミ)でも、誰にも切れない、絆の深さを表現しているが、簡潔なデザイン力、配色によって、知的な美しさが表現された作品である。市長賞・鈴木海翔の作品「あなたの記憶に生きている」は、いろいろな出来事や人との出会いがあなたを作り上げている、その繋がりを忘れないで、と白い線描と背景の薄黄から濃紺のグラデーションによる表現は、見る人を引き込む。教育長賞・中島紗希の作品「一本も欠けちゃいけない!」は、競争社会の中で、ひとり一人の存在を認め合い、お互いの絆を深めるのが社会だと、それを色鉛筆の色と長さの違いで表現した作品で、高校生らしい表現と言える。岐阜経済大学長賞・山下菜々美の作品「流されても消えないものがある」は、東日本大震災から2年数ヶ月経った現時点において、家族の絆等の人間に関わる絆に強く感動し、それを力強いイラストレーションとコピーで表現した作品となっている。優秀賞は4名いるが、大西沙織の作品「空へ誓った想い」は、表現が劇画風に描かれ、見る人を奮い立たせるような力強さがある。ただ、コピーの「ココロ、ツナグ」が弱い。田邊真子の作品「つながる星」は、「絆」というテーマを広く捉えた作品のひとつで、絆から発展した新たなイメージを連想させる作品である。山田葵の作品「家族の道標」は、アリの習性に人間を置き換えて、家族の絆の大切さをメッセージとして表現した作品である。冨岡映里の作品「共に歩む」は、盲目者と盲導犬の絆の深さを、コピー「僕があなたの道となる・・・共に歩む」と力強い木版画によって表現されていて、盲導犬の顔の表現とコピーがうまく合った作品である。奨励賞は20名で全員の作品は講評できないが、特に木下咲月、清水礼香、稲垣佑衣、田中智也らの作品は、もう少し高く評価されても良い作品である。

 以前、表彰式に出席された先生に、ポスターをどのように指導されているのか、お聞きしたことがあった。その先生は「コンクールに応募しているので入賞して欲しいが、それよりも生徒の成長記録として指導しています。」と回答された言葉に感動した。このコンクールを、美術教育の課題としてだけでなく、人間教育の一貫として捉えて指導されていることに主催者として励まされ、指導されている先生方の、今までのご支援に重ねてお礼申し上げます。

松浦 昇(審査委員長・金沢大学名誉教授)