第11回全国高校生ポスターコンクール 2012.8.25(Sat)-8.31(Fri)
11th Highschool student poster contest (Domestic)

●悲しみは、ポスターに盛り込むことはできないでしょうか?

 今年の6月2日から、第23回ワルシャワ国際ポスタービエンナーレが、6月9日から、第10回世界ポスタートリエンナーレ・富山が開催されている。この2つの国際的なポスターコンクールにおいて、東日本大震災をテーマとしたポスターが、非常に目立った。ワルシャワでは、そのテーマのポスターが金賞を受賞している。世界の人々から支援を受けていることを、我々は忘れてはならないと強く感じて、ワルシャワから帰国した。そして、2つのコンクールを観て、審査の難しさを感じた。

 ポスター芸術が、市民とデザイナーとの間に双方向性コミュニケーションとして成立していれば、『悲しみ』をポスターに盛り込むことができるのではと思っている。したがって、東日本大震災で被災された方々の『悲しみ』はポスターに盛り込まれるものと期待していたが、ポスターが市民に寄り添い、市民を勇気づけ、夢や希望を与えるまでには、音楽やスポーツとは違って、時間がかかるかもしれない、と思った。第11回全国高校生ポスターコンクールのテーマは『絆』であるので、応募作品が、東日本大震災を意識した作品が多くなることを予想していたが、高校生が多面的に『絆』を捉えていたので、表現的な広がりを期待して審査に臨んだ。

  最優秀賞は佐藤まどかの作品『僕と海の絆』が受賞した。単純なドットによる抽象的な構成で、瞬間的に何かを連想させるが、ドットの色が効果的に変化していて、それが、津波や海のイメージを深めていることに気づくと、コピーの「それでも僕は海が好きだ」が、強く響き、見る人を考えさせる。つまり、これは大震災による津波の被災者への支援のポスターではないことに気づき、ポスターのメッセージから、海に対する恐れではなく、海と向き合い、海との絆の深さに気づいたことを大切にしたいという思いが伝わってくる。今まで作者のコメントを講評で紹介することはなかったが、「絆ときいて人と人のつながりを思い出しました。ニュースでは津波の恐怖を忘れてはいけないというけれどそれは違うと思いました。そんなの人の裏切りを決して忘れるなと言っているのと同じだからです。私と海の間にも確かに絆があったんです。だから今も本当に海が好きなんです。私は忘れません。海で泳いで楽しかったこと、きれいな貝を拾ったこと、また会おうと約束したこと」を、あなたはどう受け止めますか。

 市長賞の箕浦理世の作品『命の“わ”』は、地球をハートの形で表し、その周りを動物や植物と人間の共生を、グラデーションによる線描で表している。CGの特性を活かしているが、背景の色等に工夫が欲しかった。

 教育長賞の増田悠貴の作品 絆「愛してるよ」は親子の姿を力強く表現し,配色とイラストレーションが素晴らしい。ただ、欲を言えば、コピー「愛してるよ」の大きさやレイアウトに工夫が欲しかった。

 岐阜経済大学長賞の千羽里菜の作品『皆 ささえあっていきている。』は2匹の猫が支え合っている姿を表現しているが、どこかユーモラスで楽しい作品である。背景が黄色で猫の輪郭線とコピーの黒が、全体を引き締めている。

 優秀賞の櫻井涼葉の作品『絆は道になる』は、アイデアはおもしろいが、背景の色と道の色のトーンを変えると、より良くなるように思う。また、コピーの大きさとレイアウトに工夫が欲しかった。

 福士楓子の作品『本当の絆?本当に絆?』は、犬と飼い主の関係について問いただしている。犬がリードをくわえ、これが必要でしょうかと語っているようだ。描写力は素晴らしいが、描写力に相応しいアイデアや構図を工夫すると、より素晴らしいポスターが生まれるように思う。

 菊地眞子の作品『愛のつまったお豆さん』のコピー「What do people need?」に対応して豆とハートの簡潔なイラストが描かれている。コピーとイラストにギャップがある。英字のコピーに振り回されている。タイトルの『愛のつまったお豆さん』を素直に表現した方が、より良い作品が生まれたのではと思う。

 磯あかねの作品『KIZUNA』は、都会人の絆が問われているようだ。被災に遭われた人々の絆の強さがたびたび報道され、それに感激や感動しているが、グレイのトーンと隅に追いやられた英字のKIZUNAは、人と人の繋がりが希薄な都会人の絆を問いているようだ。

 毎回感じているが、入賞以外の作品の中にも素晴らしい作品がある。少し視点を変えたり、配色を意識して色を使ったりすることで、良くなる場合が多いので、最初にできるだけ多くのアイデアを出し、配色やレタリングも考慮して構想することに、時間をかけることが大事だと思う。

 最後に、指導された先生のご苦労や応募された高校生の努力に感謝いたすとともに、このポスターコンクールが『ポスター甲子園』として、夏の風物詩として認められますように、今後ともご支援をよろしくお願いいたします。


審査委員長 松浦 昇