第10回全国高校生ポスターコンクール 2011.8.18(Thu)-8.24(Wed)
10th Highschool student poster contest (Domestic)

●ポスターは、双方向性コミュニケーションが可能か?

 東日本大震災を前にして、ポスターは無力か、何ができるのか、問われている。

 音楽やスポーツを通して、被災された人々の心を癒す取り組みは多く実施され、
被災者から好評を得ている。ポスターは無力でない、とデザイナー水谷孝次さんらのグループが、『MERRY SMILE ACTION』と銘打って、被災地のこどもたちの笑顔をポスター化に成功している。ただ、ポスターから受ける感動や共感を、多くの人々と共有するのは大変難しいが、震災を機会に双方向性コミュニケーション・ツールとして再生が期待され、その創造力が求められている。つまり、今までの一方向的なコミュニケーション・ツールではなく、ポスターは、被災された人々と支援している世界の人々との連帯を築く双方向性コミュニケーション・ツールとして、地域社会から国境を越え、復興とともに、過ちを繰り返さない未来社会を築くために、貢献することが求められている。

 第10回全国高校生ポスターコンクールに、東北地方の高校生から37点のポスターが送られてきた。締め切り日まで何点のポスターが、被災された県から送られてくるのか、心配していたが、例年と変わらない応募点数と聞いて胸を撫で下ろした。また、その表現内容も他県の生徒と違ったところはなく、意識的により明るい色彩で、希望を語ろうとしている表現が多かった。高校生のポスターにおける表現は、直接的で感情に訴える方法が一般的で、寓意的、隠喩的表現はなかなか見ることができないが、特に東日本大震災をテーマとしたポスターにおいて、被災された人々に同情的な感情が強ければ強いほど、表現が直接的になるのは当然といえよう。最優秀賞の足立明星の『今こそ、芽吹け。』は、復興を願う思いが、直接的で判りやすく表現されたポスターである。市長賞の内藤淑乃の『ぎゅっ』は、世界中の国旗(国々)が1本の太い縄として束になり、それを結ぶことによって生まれる固い結束と連帯を「ぎゅっ」という擬音語で表現している。教育長賞の神棒杏樹の『world and I』は、私が存在するのは、様々な生き物が支え合い、繋がっているからであり、その繋がりを、共存を大切にしたいと訴えている。

 岐阜経済大学長賞の山田百香の『日本を一つに』は、日本人一人一人が力を合わせて、復興に取り組もうとメッセージを送っている。優秀賞(4点)の草野友美の『smile』は、「笑う国には福がくる。」にはどうすれば良いのか、問いかけ、石田凱之の『友達』は、被災地への世界からの支援に対する感謝の気持ちを、三浦鈴未の『つなぐ、つながる。』は、大震災の時に、通信手段である電話がいかに大切であるかを、そして、中谷早希の『ECOな結び』は、ペットボトルのリサイクルを通して、人とのつながりを、それぞれ表現している。高校生のピュアなメッセージが、ポスター表現のイメージと可能性を拡げている。

 ポスターは『社会の鏡』といわれ、その時代を表現してきた。2011年3月11日に起きた東日本大震災の記憶は、映像や新聞記事等、そして、ポスターによって記録されることになるが、想像を絶する災害は、今までの生活・社会構造を根本的に変えていく。例えば、『モノ』、『カネ』よりも『ヒトの絆』、『生き甲斐』が大事にされる社会へ変わらなければ、震災で亡くなった人々の魂は、浮かばれないだろう。ポスターも今までのイメージや発想を変え、その変化に対応した双方向性のコミュニケーション・ツールとして、地域社会の復興と未来の創造に協力すべきではないかと思う。

 最後に、このコンクールが、第10回を迎えられたことに、今までご支援いただいた先生方や高校生にお礼申し上げます。今後ともご支援をよろしくお願い致します。


審査委員長 松浦 昇